こんにちは、代表の西尾です。
クラフトバタースイーツ『Butters』では、1月12日よりバレンタイン・ホワイトデーに向けた「Craft Butter Cake Chocolate(クラフトバターケーキ チョコレート)」を発売しました。
「Craft Butter Cake Chocolate」は、スペシャリティカカオを醸造するWhosecacaoさんのインドネシア産のカカオを使用し、バターのしっかりした味だけでなく、カカオのポリフェノール感と渋み、そして酸味も感じられるクラフトバタースイーツになりました。
今回は、国内ではあまり見かけないインドネシア産のカカオについて、Whosecacao 代表 の福村瑛さんにビデオ通話でお話を伺いました。
※写真左:福村さん、写真左:西尾
きっかけは大好きなチョコレートを食べて感じた疑問
ー 福村さんは異業種から創業されたと伺いました。創業のきっかけはなんだったんですか?
福村さん
「元々チョコレートが大好きで、両親に隠れてチョコレートを食べているような子どもでした。大人になってからもチョコレートに使う金額は大きく、ベンチャー企業に勤めていたので、夜中まで仕事が終わらないという日はチョコレートが息抜きになっていました。
でも夜中に食べるにはチョコレートのカロリーは高く、夜に食べられるチョコレートを探してパッケージの裏面を見るようになりました。原材料表示を見ると、どれも砂糖と植物油脂がメイン。どうしてカカオがしっかり使われているものがないのだろう?と疑問に思っていました。
またその当時カカオが高騰しているとニュースになっており、同時に高騰しているのになぜカカオ農家さんが貧困なのかと疑問を感じ、働きながらもチョコレートのことを考えていました。
そしてあるきっかけで転職を考え始め、以前から気になっていたチョコレートを仕事にしようと決心しました。初めはチョコレートのセレクトショップを開こうと考えましたが、原材料を見てもどれも同じに見えてしまい、チョコレートの目利きができない。それならばますはカカオ農園に行ってみようと、日本から1番近いカカオの生産地であるインドネシアに向かいました。」
※写真:インドネシアのカカオ産地・エンレカン
福村さん
「インドネシアでは、首都ジャカルタで情報収集を行いましたが、農園どころかカカオの木を見たことがある人すら見つかりませんでした。
結局、Airbnb(*一般の民家に宿泊する方とホストを繋ぐサービス)でカカオ農園がある地域でホストをされている方が見つかり、その方が載せている写真にカカオの木が映っていたら現地に連絡を取る方法で、カカオの木に辿り着きました。その地域は有名な観光地「トラジャ」で、現地のツアーガイドの方から紹介いただき、カカオの生産者と繋がりました。」
ー すごい行動力ですね!実際に訪問したカカオの木はどうでしたか?
福村さん
「初めて見たカカオの木にとても感動してしまいました。でも僕の様子を見て現地の方はとても驚かれていて。彼らにとってカカオの木は日常で、日本人がこんなに感動するほど貴重であることを知りませんでした。
同時に当たり前にカカオがある環境なので、彼らはカカオを食品として扱っていませんでした。そこでまずはこのカカオを品評してもらおうと、20㎏ほど買い付け日本に帰りました。
そのカカオをBean to Barの方に見せたところ、汚くてとても使えないと言われてしまい、どうやったら使えるようになるのだろうと、Bean to Barの工房で修行することにしました。
その工房ではチョコレートで起業したいと伝え、約1年間世界中のカカオ豆からチョコレートができる工程を勉強しました。例えば、カカオ豆の焙煎方法で味が変わる、テンパリングで口溶けが変わる、コンチングの時間で風味が調整できる。チョコレート作りについて学ぶことができました。
でも働くうちに、カカオ豆からチョコレートに加工する勉強ができても、国内ではカカオを生産していないため『カカオ豆』自体については学べないことに気付きました。そこで、僕が起業するならカカオ農園からモノづくりをしようとWhosecacaoを創業しました。」
インドネシア・エンレカンでの農園との取り組み
ー Whosecacaoさんは、カカオを使ったお菓子作りだけでなく、生産地やカカオ豆にも詳しく、製菓店へカカオを卸す、いわゆる裏方にも詳しいことが強みだなと感じていました。
福村さん 「ありがとうございます。実はカカオ農園とのコミュニケーション量を増やすためにあえて裏方を選んでいます。やはり時間やお金の使い方もカカオ農園との良い関係性作りに使いたい。実際にお菓子を販売する一般消費者向けのビジネスだと、時間もお金もお客様に使わないとうまくいかない。そこで農園との時間を増やすために、あえて卸という裏方の旗を立てて始めました。」
ー 一般的にチョコレートというと、南米やアフリカ産が多い中、東南アジアで特にインドネシア・エンレカンの農園と、生産から加工まで幅広く取り組んでいらっしゃるのも珍しいですね。
福村さん
「はい、やはり農園との時間を増やしていきたいので、日本から近いカカオの生産地、東南アジアと取り組んできました。中でもインドネシア・エンレカン地域の農園に関しては1から10まで共に取り組み、コロナ前は僕自身、年の半分をエンレカンやカカオ農園のある東南アジアで過ごしていました。
僕たちが欲しいカカオを作ってもらえるように、という想いもありますが、良いカカオを分けてもらえる良い関係性作りをしていると思っています。今は買い手市場ですが、おいしいカカオが作れるようになると生産地でカカオを消費するようになり、僕たちが買いたいときに『これくらいの価格だったら売ってもいいよ』と売り手市場になる。だからこそおいしいカカオを分けていただけるような良い関係性を作っていきたいと思っています。」
ー Whosecacaoさんで扱っているカカオは全てスペシャリティカカオ*1。インドネシア・エンレカンの地域では、品質が認められるまでに苦労はありましたか?
*1 スペシャリティカカオ:国際ココア機構が定める基準を満たした品質のカカオのこと。風味・色・発酵の度合い・酸度・品質などの要素から総合的に判断されます。
福村さん
「初めてエンレカンのカカオ豆を日本に持ち帰り、Bean to Barの方にを食べてもらった時は『やっぱりインドネシアのカカオは美味しくないね』と言われるほどの味でした。笑
見返したい!とエンレカンに3か月籠り、発酵の実験を繰り返したところ、あっという間に今まで食べたことないくらいおいしくなりました。農作物としてカカオの木の栽培方法を工夫したというよりも、発酵方法など加工技術の問題だったのです。」
※写真:カカオ豆の発酵時の温度を管理している様子。
福村さん
「ただ、カカオ豆自体がレベルアップしても、カカオ豆の最適な加工方法の見極め方がまだまだで、お菓子に使ったときにカカオの酸味が目立ってしまったり、誰にでも認められるような素材にはなっていませんでした。僕たちもようやく見極められるようになり、スペシャルティカカオをドリンクの形で楽しめるよう開発をした商品『SPECIALTY CACAO DRINK』が、International Chocolate Awards 2020 *2 のドリンク部門において、銀賞をいただくことができました。」
*2 International Chocolate Awards :2012年に設立された優れたチョコレートに与えられる国際的な賞。
※写真:カカオポッドを開けると、真っ白のカカオ豆が。
ー 食べられるようなカカオ豆でなかったと聞いて、食品としてカカオが良くなかったのかと思ったのですが、加工技術の問題だったんですね。
福村さん
「はい、加工技術の問題が大きかったです。もちろん、農作物としてカカオの木をより良くするために栽培でも工夫しています。
例えば、カカオポッドを開けると通常は真っ白ですが、虫に食われていて真っ黒のものがあります。真っ黒だと風味が良くなく、使い物にならない。そこで虫対策としてカカオポッド1つ1つに袋掛けを行っています。もう途方もない作業なので、その分高い値段で買えるようにしないといけないなと身に染みて感じています。」
よりカカオの風味を楽しめる『カカオマス』を使ったお菓子作り
ー Whosecacaoさんのカカオマス*3 を使ったお菓子ブランド「CROKKA」をいただいて、カカオマスだったらこんなにカカオの風味が出るんだととても驚きました。あえて裏方を選んだと仰ってましたが、自社でお菓子ブランドを始めたきっかけは?
*3 カカオマス:カカオ豆の胚乳部カカオニブをすりつぶしたもの。Whosecacaoさんではカカオマスとクーベルチュール(砂糖や乳成分を入れて調整した製菓用チョコレート)をパティスリーやショコラティエに用意されています。
福村さん 「僕たちのカカオマスは従来のクーベルチュールに比べて風味が変わっているものが多いため、パティスリーやショコラティエが持っている既存のレシピに合わせるのが難しく、試作を何度も繰り返さないと商品化しにくいようです。しかもカカオマスは素材の単価が高いので、導入を諦めてしまうこともありました。そこで、僕たちがお菓子を作るならこう作るという例として始めたのが『CROKKA』です。」
ー 確かに僕たちも試作を何度もしました。笑 クーベルチュールしか経験がなかったので、クーベルチュールでの製造を考えていましたが、CROKKAのお菓子のような風味を出すならカカオマスが良いとオススメしてもらって変更して…。
結果的にカカオマスを使ったので、僕たちのCraft Butter Cakeに合わせて砂糖の量や、カカオの風味を調整することができて味の幅が広がりました。カカオマスにチャレンジして本当によかった。
福村さん 「そうですね、カカオマスはよりBean to Barに近い素材なので、カカオの風味を活かしたお菓子を作りたい方に向いている材料だと思います。」
バターの芳醇さとカカオの満足感、Craft Butter Cake Chocolate
ー Craft Butter Cake Chocolateは、手前味噌ですがBean to Barのチョコレートを食べたときのようなカカオ本来の味わいも感じつつ、バターの芳醇さも楽しめるお菓子に仕上がったなと思っています。今回どのようにカカオを加工いただいたのでしょうか?
福村さん 「よかったです!Bean to Barのお菓子だと、豆本来のおいしさを出せる浅煎りにすることが一般的ですが、今回はバターが主役のお菓子なのでバターと合わせた時に食べやすく、かつカカオ豆の風味やおいしさも感じられるように中煎りでカカオマスを作りました。」
※写真:Whosecacaoさんは国内の工房でカカオ豆を焙煎しています。
福村さん
「また、カカオマスのポリフェノールによる渋みは、豆本来が持っているもので、僕たちが発酵で酸味・フルーツ感・アルコール感・アミノ酸による旨味を作っていきます。渋み・酸味どちらが強すぎても他のお菓子に合わせにくくなります。
今回は焼き菓子なので、食べた時にチョコレートの満足感も出せるよう酸味と渋みのバランスを調整しCraft Butter Cakeに合わせていきました。」
ー 実際に出来上がったCraft Butter Cake Chocolateを食べてみていかがでしたか?
福村さん 「まずバターが主役として温かく包み込んでくれて、そこに程よくカカオの風味を感じられて、僕たちのカカオってこんなに食べやすかったんだと驚きました。僕たちが作るお菓子はどうしてもカカオの風味を出そう!とカカオの味を全面に出してしまうので、新しい発見でした。」
現地の農園と一緒になってカカオを育て、加工するWhosecacaoさんのカカオを使用した『Craft Butter Cake Chocolate』は、カカオとバターが出会うことでお互いの個性を引き立たせ、バターの風味はより強く、ミルクジャムとフィナンシェ生地のコントラストが強調された味に仕上がりました。
3月の半ば頃まで各常設店・POP-UP STORE・オンラインでご購入いただけますので、ぜひお召し上がりください。
Craft Butter Cake Chocolate 10個入 (5個入×2箱)
3,672円
HiO ICE CREAMの姉妹ブランド「Butters」のCraft Butter Cakeの期間限定フレーバー。
Butters Onlineへまた、Whosecacaoさんの手掛けるカカオ豆やカカオマスをオンラインでお取り寄せいただけます。
Whosecacao 福村さん、素敵なお話をお聞かせくださりありがとうございました!
今年のバレンタイン・ホワイトデーは、ぜひ「Craft Butter Cake Chocolate」でイギリス・ジャージー島のバターと、インドネシア・エンレカンのカカオのマリアージュをお楽しみください。